誠に勝手ながら、本サイトは2024年8月31日をもちましてサービスを終了させていただきます。
現在は新規会員登録は受付しておりません。
ご利用中の皆さまには大変ご迷惑をお掛けいたしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

< Weekly コラム一覧へ
2024.04.08

糖尿病の負のイメージを払拭へ 新名称候補「ダイアベティス」

 

糖尿病は国民病とも言われ、決して珍しい病気ではありません。しかし日本糖尿病協会の調査では、「糖尿病」という名称に患者の9割が抵抗感や不快感を抱いているという結果もあります。最近では病名を新名称にしようとする動きがありますので、ご紹介したいと思います。

ダイアベティスとは

新名称の候補の一つが「ダイアベティス」です。糖尿病の英語表記である「Diabetes Mellitus(ダイアベティス・メリタス)」からきています。ダイアベティスは「水が通り過ぎる・あふれだす」、メリタスは「蜜のように甘い」ということですので、飲んだ水が体を通り過ぎて甘くなるという意味になります。

なぜ名称変更が検討されているのか

「糖尿病」という名称を使っていく上で問題となることの一つに、病態を正しく表していないということが挙げられるでしょう。糖尿病の人が全員、尿に糖が出るとは限りません。また、「尿」という言葉が病名についていることが、不潔なイメージを連想させるといったマイナスイメージも否定できないでしょう。

そして病名を変えようという動きの根底には、「スティグマ払拭」という大きな課題があります。

 

「糖尿病とスティグマ」の記事はこちら

 

スティグマ払拭の一歩に 

スティグマ(ある特定の人や集団がいわれのない差別や偏見などで社会的不利益を受けること。)は糖尿病患者にも向けらえてきました。家族・友人・同僚といった周囲の人達、医療従事者、メディアなど多方面からのスティグマを経験しています。例えば非難を受けたり、差別されたりといった経験から、病名を隠したり、医療従事者に治療の希望を伝えられなかったりするケースもあるようです。

 

また生命保険に入れなかったり、住宅ローンを断られたりといった不利益な差別を受けることもあります。

治療が進歩して一病息災を実現する人が増えていきている現代にあって、まだ古い時代の糖尿病の誤ったイメージの拡散や、社会における糖尿病の知識不足からスティグマが存在しています。名称変更にはこのスティグマの払拭という大きな狙いもあるのです。

 

 

名称変更の問題点 

糖尿病に限らず、過去に病名を変更した疾患はあります。例えば「痴呆(ちほう)症」は「認知症」に、「精神分裂病」は「統合失調症」に変わりました。一方で、病名変更がうまく定着しなかった事例もあります。名称変更にはどのような問題点があるのでしょうか。

名称変更の問題点 

イメージは人によって様々ではありますが、「糖尿病」という名称自体は定着しています。これをなじみの薄い「ダイアベティス」に変えて、果たして定着するのかという懸念はあります。「ダイアベティス」は少し覚えにくい印象があり、言葉から病気の実態を連想しづらいのではないか、普及は難しいのではないかとの声もあります。

名称変更にあたっては、「糖代謝症候群」など別の候補を推す意見もありました。最終的に「ダイアベティス」が有力候補となったのには、学術的な正しさや国際的に受け入れられるとの理由があったようです。単に名称を変えて、「糖尿病」という名称を消すことに注力してしまうのでは、「病気に対して正しい理解を導くという」本来の目的は達成できないでしょう。

いつから新名称に変わるのか 

病名自体の正式な変更はすぐには難しいと考えられます。日本糖尿病学会・日本糖尿病協会では、「ダイアベティス」という呼称を病気の啓発活動などの中で使っていきながら、今後1年程度をかけて、患者や行政をはじめ社会全体の合意を得ていきたいと考えているようです。

日本糖尿病協会では、スティグマを生じやすい糖尿病医療用語と代替案もまとめています。患者や家族に対し、呼称案を決めた経緯を説明し、意見を求める場をつくることも検討されており、徐々に浸透していくことを目指しています。

 

 

糖尿病のない人と変わらない人生を

病気の状態を正確に表しているとは言い難い「糖尿病」という言葉から、新名称に変えていこうという動きは、スティグマ払拭という大きな目的の手段にすぎません。不用意なスティグマにより当事者が病名に抵抗を持ってしまうことで病気を受け入れられなかったり、前向きな気持ちで治療に向き合えなかったりすることは、当事者にとっては大きなマイナスです。

治療法が進歩した現代で必要以上に健康リスクがあると思われ、就職など社会生活で不利な状況に置かれる人が少しでもなくなるように、糖尿病があってもなにひとつやりたいことを阻害されず、自分の夢を実現できる社会が構築できるように、「名称変更」という大きな動きの意図を正確に理解することが求められるでしょう。

まとめ

「糖尿病」という名称にどういうイメージを抱くのか、これは当事者やその身近な人、医療従事者と、あまり疾患になじみのない人々とでは大きく異なるかもしれません。名称変更は大きな動きですので、すぐさま受け入れられていくわけではないかもしれませんが、これまで無意識のうちに糖尿病に差別的なイメージを持っていた人々も含め、社会を動かす一石を投じることになるのではないでしょうか。

 

糖尿病は国民病とも言われ、決して珍しい病気ではありません。しかし日本糖尿病協会の調査では、「糖尿病」という名称に患者の9割が抵抗感や不快感を抱いているという結果もあります。最近では病名を新名称にしようとする動きがありますので、ご紹介したいと思います。

ダイアベティスとは

新名称の候補の一つが「ダイアベティス」です。糖尿病の英語表記である「Diabetes Mellitus(ダイアベティス・メリタス)」からきています。ダイアベティスは「水が通り過ぎる・あふれだす」、メリタスは「蜜のように甘い」ということですので、飲んだ水が体を通り過ぎて甘くなるという意味になります。

なぜ名称変更が検討されているのか

「糖尿病」という名称を使っていく上で問題となることの一つに、病態を正しく表していないということが挙げられるでしょう。糖尿病の人が全員、尿に糖が出るとは限りません。また、「尿」という言葉が病名についていることが、不潔なイメージを連想させるといったマイナスイメージも否定できないでしょう。

そして病名を変えようという動きの根底には、「スティグマ払拭」という大きな課題があります。

 

「糖尿病とスティグマ」の記事はこちら

 

スティグマ払拭の一歩に 

スティグマ(ある特定の人や集団がいわれのない差別や偏見などで社会的不利益を受けること。)は糖尿病患者にも向けらえてきました。家族・友人・同僚といった周囲の人達、医療従事者、メディアなど多方面からのスティグマを経験しています。例えば非難を受けたり、差別されたりといった経験から、病名を隠したり、医療従事者に治療の希望を伝えられなかったりするケースもあるようです。

 

また生命保険に入れなかったり、住宅ローンを断られたりといった不利益な差別を受けることもあります。

治療が進歩して一病息災を実現する人が増えていきている現代にあって、まだ古い時代の糖尿病の誤ったイメージの拡散や、社会における糖尿病の知識不足からスティグマが存在しています。名称変更にはこのスティグマの払拭という大きな狙いもあるのです。

 

 

名称変更の問題点 

糖尿病に限らず、過去に病名を変更した疾患はあります。例えば「痴呆(ちほう)症」は「認知症」に、「精神分裂病」は「統合失調症」に変わりました。一方で、病名変更がうまく定着しなかった事例もあります。名称変更にはどのような問題点があるのでしょうか。

名称変更の問題点 

イメージは人によって様々ではありますが、「糖尿病」という名称自体は定着しています。これをなじみの薄い「ダイアベティス」に変えて、果たして定着するのかという懸念はあります。「ダイアベティス」は少し覚えにくい印象があり、言葉から病気の実態を連想しづらいのではないか、普及は難しいのではないかとの声もあります。

名称変更にあたっては、「糖代謝症候群」など別の候補を推す意見もありました。最終的に「ダイアベティス」が有力候補となったのには、学術的な正しさや国際的に受け入れられるとの理由があったようです。単に名称を変えて、「糖尿病」という名称を消すことに注力してしまうのでは、「病気に対して正しい理解を導くという」本来の目的は達成できないでしょう。

いつから新名称に変わるのか 

病名自体の正式な変更はすぐには難しいと考えられます。日本糖尿病学会・日本糖尿病協会では、「ダイアベティス」という呼称を病気の啓発活動などの中で使っていきながら、今後1年程度をかけて、患者や行政をはじめ社会全体の合意を得ていきたいと考えているようです。

日本糖尿病協会では、スティグマを生じやすい糖尿病医療用語と代替案もまとめています。患者や家族に対し、呼称案を決めた経緯を説明し、意見を求める場をつくることも検討されており、徐々に浸透していくことを目指しています。

 

 

糖尿病のない人と変わらない人生を

病気の状態を正確に表しているとは言い難い「糖尿病」という言葉から、新名称に変えていこうという動きは、スティグマ払拭という大きな目的の手段にすぎません。不用意なスティグマにより当事者が病名に抵抗を持ってしまうことで病気を受け入れられなかったり、前向きな気持ちで治療に向き合えなかったりすることは、当事者にとっては大きなマイナスです。

治療法が進歩した現代で必要以上に健康リスクがあると思われ、就職など社会生活で不利な状況に置かれる人が少しでもなくなるように、糖尿病があってもなにひとつやりたいことを阻害されず、自分の夢を実現できる社会が構築できるように、「名称変更」という大きな動きの意図を正確に理解することが求められるでしょう。

まとめ

「糖尿病」という名称にどういうイメージを抱くのか、これは当事者やその身近な人、医療従事者と、あまり疾患になじみのない人々とでは大きく異なるかもしれません。名称変更は大きな動きですので、すぐさま受け入れられていくわけではないかもしれませんが、これまで無意識のうちに糖尿病に差別的なイメージを持っていた人々も含め、社会を動かす一石を投じることになるのではないでしょうか。